ぼくのインスト
こんにちは。
先日,本を一冊読み終えました。
昨年秋のゲームマーケット*で購入した「みんなのインスト」という本です。
17名の方のインスト**についての考え方を寄稿した本で,同じ大枠のテーマについて書いているのに17人のうちで全く同じ考えの人はおらず,興味深く読めました。
17人のうち,私と同じ考えの方もひとりもいなかったので,何かの参考になればと思い「ぼくのインスト」観を書いていきます。
*ゲームマーケット:同人を中心としたボードゲームの即売会。詳しくはこちら。
**インスト:「ゲームルールの説明,ゲームへの導入」くらいの意味。多義。
■目次
▶インストの準備▶実際のインスト
▶まとめ
■インスト準備編
さて。
さっそくですが,私はインストの目的を「プレイヤーをゲームに引き込む」ことだと考えています。そのことを念頭に置いて読んでいただけると幸いです。
まずは私が参加するゲーム会の環境から説明しましょう。
私が参加するゲーム会は,ほぼ友人を中心とした自宅でのゲーム会です。参加者は同年代(20〜30歳くらい)の4〜10名程度。最近は友人の友人が来ることも多くなりましたが,基本的には参加者は顔見知りです。
「参加者同士はほとんどが初対面のオープンなゲーム会」での話ではありませんのでご了承ください。
インストの準備段階から説明していきましょう。
まずゲームを買ったら説明書をじっくりと読み込みます。
このときに考えるのが,インストに何分かかるか。
だいたいの所要時間によって準備するものを変えています。
- インストが10分以内で済むようなら特に準備するものはなし
- 15分程度かかるようならサマリー***を用意
- 20分以上かかるなら,参加者に事前に目を通してもらうためのスライドや資料を作成
経験上,10分以内でインストが終わるゲームであれば,20歳以上を相手にインストする場合,特別な準備は必要ないでしょう。
15分ほどかかりそうなゲームからが問題で,カードに個別の効果が発生したり,複雑なアクションがあったりします。
そんなつまらない内容をダラダラ聞いても面白くありません。
というわけでそういった細かな説明を省くために,カードの効果やアクションを一覧にしたサマリーを用意します。
さらに説明だけで20分以上かかりそうなゲームについてです。そのゲームをすることが決まっているのであれば,事前にゲーム紹介用の資料やスライドを参加者に渡して,さっと目を通しておいてもらいます。
複雑なゲームでも,前もってある程度の知識を持ってもらえば導入がスムーズになり,時間が短縮できます。ざっとでも目を通しておいてもらうだけでもかなり違ってくるのでオススメです。
ちなみにスライドに関しては,以前こんな記事を公開しました。henbodo.hatenablog.com
こんな感じでほかにもいくつか使っているのですが,画像の権利的なゴニョゴニョでwebで公開できていません。そのうちweb公開用に作りなおそうかなとは思っているのですが……
ともかく,大体のインスト時間の目処をつけ,資料の準備が完了しました。次にすることはBGMと小道具探しです。
BGMについては以前こんな記事を書きました。
henbodo.hatenablog.com
細かい内容は先の記事に譲りますが,ゲームに合ったBGMがあると気分がノってきます。そしてさらに,インストの段階からBGMを流しておけば,プレイヤーをゲームの世界に引き込みやすくなります。
たとえば,「インカの黄金」のインストで,
「君たちは古代インカの秘宝をさがす探検家です」なんて言っているときに映画「インディ・ジョーンズ」シリーズのアノ曲が流れたらテンションが上がってくる気がしませんか?
BGMの次は小道具です。小道具は大きく分けて2種類あります。
ひとつはゲームの進行を便利にするための道具。もうひとつはゲームの雰囲気を盛り上げるための道具。
前者は,たとえばアグリコラの資源を分けるためのケースなどです。
せっかく音楽で雰囲気を出してスムーズにしゃべっていても,ボードの設置に手間取っているようではインストのテンポが悪くなってしまします。気分よく進めるためにも,この準備はしっかりとしておきます。
そして後者の小道具は(自分含め)プレイヤーの興味を引くためのものです。たとえばドラスレ用にドラゴンのフィギュアを出してみたり。
キング・オブ・トーキョーにキングジョーブラックを出してみたり。
パンデミックにゾンビを出してみたり……
BGMも小道具も,やり過ぎると引かれてしまうので注意は必要です。しかし,私はプレイヤーをゲームに引き込むことがインストの目的だと思っているので,空気を読みつつBGMや小道具を最大に活かしていきましょう。
***サマリー:ゲームルールの要約を書いたシート。カードの効果やアクションの種類が一覧になっていることが多い。
■実際のインスト
というわけでここまでインストの準備についてごちゃごちゃ書いてきましたが,私のインストの基本的な考え方はシンプル。「空気を読んでフレキシブルに」です。
10分以内でインストが終わるゲームの場合
ここではニムトを例に説明しましょう。インストの順番は次の通りです。
- ゲームの名前と背景ストーリー,ゲームの目的(なるべく点数を低くする)を説明する
- 実際にカードを配る。場に4枚のカードを並べる
- 各プレイヤー適当にカードを1枚出してもらう
- カードの置き方を説明しながら,実際に置いていく
- (誰かが6枚目のカードを置くまで繰り返す)
- 6枚目のカードが置かれたら,失点の説明をする
- ゲームの終了条件(手札が尽きたら終了)とカードの枚数(1〜104までが各1枚)などの細かい情報を説明する
なにも特別なことはしていません。が,大切(だと思っている)ことは,実際にプレイヤーに手を動かしてもらうことと【4.】で実際にカードを置く場合,インストする側がカードを置くのは最初の1回だけで,2回目以降はプレイヤーにカードを置いてもらうことです。
「お嬢さん,この状況だと73はどこに置きましょうか?」
こうするだけで,各プレイヤーがカードの置き方を理解できているかわかります。
プレイヤーに考えてもらう機会を大切にしましょう。
さて。
インストに15分以上かかるゲームでは,そのゲームによってインストの手順は大きく変わります。
が,長丁場のインストで大切なことは,やはりプレイヤーにカードやコマなどを動かしてもらうことと,プレイヤーの顔を見ることです。
もしインストをするなかで,プレイヤー全員が最後まで真剣に聞いてくれているようならば,当初想定していた通りにインストを進めましょう。
途中で腑に落ちない顔をしているプレイヤーがいたら,キリの良い所で何か質問がないか確認しましょう。人は疑問を抱えたままだとなかなか次のことに集中できません。プレイヤーが疑問を抱えていそうなら早めに解決してしまったほうが吉です。
もしその疑問をあとで説明するつもりだったら,「それはあとで説明します」の一言を言うだけでもいいでしょう。とにかくプレイヤーの気持ちをスッキリさせます。
インストの途中でプレイヤーが飽きてしまうこともあるでしょう。
ゲームをしにきたのに15分以上も話を聞かされたら誰だって飽きてしまします。仕方がない。フレキシブルに対応していきましょう。
プレイヤーが飽きているのを察したら,ルールの大枠だけ説明して「じゃあ1回やってみようか」ということで実践に移ります。
とはいえインストだけで15分以上かかるゲーム。おそらくプレイ時間も1時間以上のものが多いでしょう。そうなってくると,「ルールわかってないけど1回やってみよう」は少し怖い気もします。
ルールの理解が曖昧で,わけがわからないままダラダラと続けるゲームほど苦痛なものはありません。
ということで最近やっているのがミニゲーム。体験版のような短いゲームをプレイするようにしています。
たとえば「カタンの開拓者たち」であれば,最初から8点分の開拓地と都市,街道を適当に置いた状態でゲームをスタートさせます。
すると序盤からバンバン資源が出るので交渉の方法もわかるし,施設の建て方や都市の強さもわかります。おまけにあと2点でゲームが終わるので,場合によっては15分ほどで決着が付きます。(無理に決着をつける必要もないのですが……)
そのほか,ニムトのようなカードゲームであれば手札の初期枚数を5枚くらいで始めるのもいいでしょう。
惨劇RoopeRであれば,登場するキャラクターを4人くらいにして2ループで終わるシナリオを用意しておくとスムーズに説明ができます。(このときキーパーソンとシリアルキラー,お嬢様が入るようにしておくと「敗北」「事件発生」の両方を経験させやすくてとてもいい感じです。)
この「とにかく1回やってみよう」という説明方法は嫌いな方もいるでしょうが,ミニゲームをすればプレイヤーの勘違いや理解不足な点もわかりますし,時間もかからないのでおすすめです。
■まとめ
というのが「ぼくのインスト」ですがいかがでしょうか。細かい話をすれば,「専門用語を使わない」ですとか,「インスト中に使う用字用語は統一する」などいくつも気をつけている点はあるのですが,要するに,「プレイヤーをゲームに引き込む。プレイヤーが飽きていそうなら臨機応変に対応」というのがすべてです。
インストに正解もはありませんが,私はこの方法でインストをしていて,少しずつゲーム会への参加者が増えているので少なくとも間違った方法ではないと思います。
インストに困った際の一助になれれば幸いです。