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編集者はボードゲームの夢を見るか

ボードゲーム好きな新人編集者のブログ。ボードゲームの本を作りたい。

幻影探偵団

 ゲームマーケットも近いので,再販・拡張販売予定のゲームをどんどん紹介していきましょう。

幻影探偵団

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人数:3〜4人
ルールの難しさ:★★★★☆
プレイの難しさ:★★★☆☆
プレイ時間:60分

 帝都の闇に暗躍する探偵団となり,怪人・髑髏王の影を追う……

■目次

 ▶ゲームの紹介/概要

 ▶ゲームの流れ

 ▶プレイ感

■ゲームの紹介/概要

大正末期、東京市で美女ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が発生していた。
被害者の遺体は鋭利な刃物で無残に切断されていたが、豪華な宝石を身につけ、美しく飾られていた。
そして、不思議な事に、その遺体は腐ることなく、笑みをうかべ、生前の面影を残したままだという…。
手がかりは、遺体から発見された『Memento Mori(死を思え)』と書かれた紙片のみ。
やがて、遺体発見現場付近で目撃された怪人物の情報から、
犯人は『髑髏王』と名付けられたが、その正体を知るものはいなかった…。
(幻影探偵団ルールブックより)

 幻影探偵団は,プレイヤーが各自の探偵団を率いて推理を繰り広げるゲームです。


 薄暗い部屋の中,燭台のほのかな光に揺らめく新聞をめくる――世間を騒がしているのは又しても髑髏王の犯行だ。影のように忍び寄り,煙のように消える大犯罪者髑髏王。今度の被害者はとある令嬢のようだ。仮令どんなことしても他の幻影探偵団を出し抜き,我が探偵団『朧』が彼奴の正体を暴かなくては……。
 其れだけじゃあない。一切正体を明さない,薄っ気味悪い他の幻影探偵団の連中の正体も白日の下に晒して,『朧』こそが最も優れた幻影探偵団だと見せ付けてやる。
 ――髑髏王の鼻を明かす算段に耽っていると,一寸開いたドアから手紙が投げ込まれた。誰も場所を知らぬはずのこのアジトに,一体誰が……?

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 ……いい機会じゃないか。怪人も幻影も,総べてを暴いてやる。
 夜の風が朽ちた匂を運び,魔物の住む洞穴へでも入った様な何とも云えぬ不気味な感覚を,何処か頭の片隅にもたらした。


 というところから始まります。
 もうこの後はふつうに書きましょう。

 プレイヤーは『』『』『義死』『帝都』のいずれかの幻影探偵団を率いて,令嬢が殺される前に,容疑者の中にいる髑髏王の正体を暴くことを目指します。
 ゲーム中の行動・推理によってポイントを獲得し,ゲーム終了時にもっともポイントの高かったプレイヤーの勝利です。

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 4つの探偵団のアイコン。

  
 ゲームの設定や雰囲気,「髑髏王」というワードからもわかるかもしれませんが,江戸川乱歩の世界をモチーフとした(と思われる)ゲームです。
 私は個人的に乱歩が大好きなのですが,このゲームも雰囲気がとても好きです。
 
 ルールブックはこのゲームを制作しているハッピーゲームズさんが公開しているので,本ブログでは『朧』探偵団視点で4人プレイ時の大筋を紹介していきます。
 細かなルールが気になる方は以下のリンクからどうぞ。
 keikoku.blog.so-net.ne.jp


■ゲームの流れ

 まずは準備から。容疑者カードに書かれた人物の役割を決めます。

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 容疑者カード。性別とイニシャルが書かれている。男性6枚,女性6枚,正体不明の影男1枚。


 影男以外の12枚の中からランダムに1人を髑髏王とし,残ったカードから各幻影探偵団の団長をランダムに1枚ずつ(この中に必ず影男が含まれる)配ります。残ったカードは同じように各幻影探偵団の団員1,2として配っていきます。
 これで各幻影探偵団の構成員,髑髏王の正体が決まりました。


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幻影探偵団『朧』のメンバー。団長は歌姫,団員1は婦人,団員2は美少年。くれぐれも他の探偵団には知られぬよう。


 探偵団を率いるみなさんに渡されるのは,この容疑者カードと各探偵団のシートフォルダ

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 幻影探偵団『朧』

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 幻影探偵団『叶』

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 幻影探偵団『義死』

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 幻影探偵団『帝都』


 そして推理で使うことができるアクションカード探偵手帳です。

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 探偵手帳。探偵手帳には歯車館の見取り図や容疑者表がついており,推理の助けとなる。
 

 自分の幻影探偵団のメンバーを確認し,道具を揃えたころ。いよいよ幻影探偵団たちが惨劇の舞台である歯車館にやってきます。
 
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 歯車館の見取り図。2階建て。


 プレイヤーは順番に,影男以外の12人を館の各部屋へ配置していきます。
 このとき,自分の探偵団のメンバーでも,それ以外のメンバーでも配置できます。

 館のどこに誰を配置するかはゲームの中でもかなり重要な要素です。


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 配置を終えた歯車館。

 12人全員の配置が済んだら捜査が始まります。

 操作はターンのプレイヤーがおこない,「尋問」か「アクションカードの使用」かどちらかを選ぶことができます。

 
 「尋問」をする場合,使用するのはこの尋問カード。


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 尋問カード。最初の招待状の裏面になっている。
 
 自分以外のプレイヤーを選び,その相手を尋問にかけます。
 館の中を白線の部分に尋問カードを置いて区切り,その範囲に相手の団員がいるかどうかを尋ねることができます。

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 館内を尋問カードで区切る。矢印側が尋問範囲。つまり範囲はC,H,J,Kの4人


 例:『叶』探偵団のプレイヤーに尋問をする場合

 尋問で聞くことができるのは,「その範囲に相手の探偵団の団長/団員1/団員2」がいるかどうかです。


 「『叶』さん,いるんだろ? この中におたくの団員1が。」


 尋問されたプレイヤーはそれに対して,基本的には正直にYES/NOで答えます。
 こうして各探偵団の構成員を少しずつ絞っていき,容疑者カードを特定することを目指します。

 もうひとつの「アクションカード」は各カードによって効果が異なります。

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 アクションカード。全24枚。

 アクションカードの効果一覧は各探偵団のシートフォルダに載っている親切仕様です。

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 シートフォルダの内面。アクションカードの効果や枚数が一覧になっている。ほかのプレイヤーから自分の探偵手帳を隠しつつ,アクションカードを確認できる。


 捜査を受ける側は基本的に正直に答えなければならないのですが,ひとつだけ例外があります。
 それが影男の存在。

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 影男。性別不詳でA~Lのアルファベットも書かれていない。

 影男は団長のなかの誰かなのですが,彼?には容疑者チップ(歯車館に置かれたチップ)がありません。

 影男が関係する捜査(例:『帝都』の団長が影男の場合の,「『帝都』の団長はこの範囲にいますか?」など)では,影男はA〜Lの誰かになりすまし,嘘をついて答えなければなりません。
 影男が自分の探偵団にいると,ほかの探偵団の捜査を撹乱することができますが,ほかの探偵団に比べ,内容が明らかな容疑者カードが1枚少ない状態で始まるため一長一短。
 影男が誰になりすまし,どう動くかがゲームのカギかもしれません。。

 さて。
 ひとまず捜査をおこなった『朧』探偵団ですが,そうしている間にも時間は進みます。
 髑髏王の凶刃は刻一刻と令嬢に迫りつつあるのです。

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 囚われの令嬢と回転するノコギリ。残された時間は少ない。


 尋問/アクションカードの使用をすると,時計の針が進みます。

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 分数計。操作をするたびに時間が経過し,「伍」になると令嬢にノコギリが近づく。

 使用した「尋問カード」や「アクションカード」に指定された分だけ,分数計チップを進めてください。

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 「尋問カード」の場合。左上に書かれた「1」だけ分数計を進める。 


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 アクションカード「解読」の場合。左上に書かれた数字がこのカードの分数計の進み方。


 分数計が伍を経過すると,この歯車館に仕掛けられたノコギリが囚われの令嬢へと迫ります
 
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 「伍」になった分数計。こうなるとノコギリが進む。次回分数計をすすめるときは「壱」に戻る。

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 1マス分令嬢に近づいたノコギリ。

 分数計を伍にしたプレイヤーは,ノコギリチップを1つ進め,宝石チップアクションカードを各1枚手に入れます。
 真相を明かすべく奔走する幻影探偵団への,髑髏王からの贈り物です。

 宝石チップはゲーム終了時に1ポイントになります。さらに,アクションカードの中には特定枚数以上の宝石チップを持っていないと使用できないものもあります。
 そんな便利な宝石カード。令嬢の身を危険にさらしてでも絶対に取りましょう!!


 ……というわけにはいきません。
 まず,1人で5枚以上の宝石チップを獲得してしまうと,令嬢の身を危険に晒し過ぎたペナルティとして,自分が獲得した宝石チップのポイントはすべて0ポイントになります。
 そしてもうひとつ忘れてはいけないのは,この宝石チップが髑髏王からの贈り物であるということ。
 そう。これは髑髏王からの罠でもあるのです。
 宝石チップを2枚集めてしまうと,団員が1人死亡します。
 宝石チップを4枚獲得してしまうと,団長が死亡します。
 団員・団長が死亡すると,それが誰なのか公開されます。

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 髑髏王の罠にかかり死亡した『朧』の団員1。表にして正体を公開する。


 自分の団員が死亡すると,ほかの幻影探偵団にだけ情報を与える形になってしまうので,十分注意しましょう。

 あとはこれを繰り返し,次のいずれかの状態になったらゲーム終了です。

1.「真相解明」を宣言する

 捜査を進めていき,「髑髏王」と「ほかの幻影探偵団全員の正体」がわかったプレイヤーは,ターンのはじめに「真相解明」を宣言します。
 真相解明が宣言されるとそこで捜査は終了。すべてのプレイヤーは推理手帳を整理し,髑髏王・各探偵団の正体を書き込みます。
 その後,真相解明を宣言したプレイヤーは自信に満ちた表情をするなり,高笑いをするなり,部屋の中をぐるぐる歩き回るなり,ジッチャンの名にかけるなり,好みの方法で推理を披露しながら髑髏王・各探偵団の容疑者カードを表にして答え合わせをしていきます。
 実際の正体を全員の推理を照合してポイントを決めていきます。

2.令嬢の死

 最後の宝石チップが無くなってしまった場合,髑髏王の仕掛けた凶刃が令嬢を襲い,強制的に操作は終了です。
 その時点で全員が髑髏王・各探偵団の正体を探偵手帳に記入し,答え合わせをおこないます。

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 令嬢に迫る髑髏王の凶刃。不甲斐ない幻影探偵団のせいで,またひとつ髑髏王の芸術作品が完成してしまった……


 答え合わせの結果,

  1. 髑髏王の正体を当てれば4ポイント
  2. 団長の正体を当てれば1人につき2ポイント
  3. 団員の正体を当てれば1人につき1ポイント
  4. 「真相解明」を宣言し,髑髏王の正体を当てれば追加で2ポイント
  5. 「真相解明」を宣言し,髑髏王の正体を当てられなければマイナス2ポイント
  6. 影男を持っている場合,「真相解明」を宣言できなければマイナス2ポイント
  7. 宝石チップを持っていれば,4枚までは1枚につき1ポイント

 として各プレイヤーのポイントを計算し,最高得点を得たプレイヤーが最も優れた幻影探偵団です!

■プレイ感

 とはいえ実はここでゲームが終わりではありません。
 ゲームの終了の仕方によってエンディング・ストーリーが分かれます。

  • 令嬢の死によってゲームが終了した場合
  • 「真相解明」を宣言して,髑髏王の正体を外した場合
  • 「真相解明」を宣言して,髑髏王の正体を当てた場合
  • 「真相解明」を宣言して,すべての正体を当てた場合

 このエンディング・ストーリーだけは制作元のハッピーゲームズさんのサイトでも公開されていません。エンディングは君の目で確かめよう!

 
 というこの幻影探偵団。
 正直な話をすると,ゲームのシステムをあまり調べずに雰囲気につられて買ったのですが,ゲームとしてもなかなかおもしろかったです。
 似たような推理ゲームですと,「クルード(クルー)」というゲームが有名なのですが,こちらは操作の方法やアクションカード,そして何より影男のおかげでかなりできること・考えることに幅ができて本当に「推理をしている」という感じでした。

 そして何より雰囲気がいい。
 もう一度セットの内容を見てみましょう。
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 容疑者カードもボードも凝っています。
 
 また大正期のミステリ風……というか乱歩風の設定もいい雰囲気を出しています。
 上述のエンディング・ストーリーはもとより,ゲーム自体には何も関係がありませんが4つの幻影探偵団にはそれぞれの特徴が決まっています。髑髏王や影男,髑髏王の起こす事件のディテールも書かれており,これを読んでからゲームを進めるとより雰囲気を楽しめるでしょう。

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 各幻影探偵団の物語。ゲームには一切関係ない。


 ちなみにゲーム中ではあまり言及されていませんが,「影男」はおそらく乱歩の小説の登場人物がモチーフ。原典ではさまざまな顔と名前をもつ,本名不明の変装名人です。男女を問わず変装することができるという設定を反映して,あらゆる容疑者になりすますことができるようです。

 「髑髏王」や「令嬢」,「芸術作品」というキーワードを見るに,乱歩の「恐怖王」と関係がありそうな気もしますが,似たような雰囲気の作品は幾つもあるので事実は闇の中。


 このゲームは淡々と進めるよりも探偵になりきって捜査をしたり,推理を披露するほうが楽しめます。
 各探偵団に設定はあるものの,それは気にせずホームズになりきってみたり,ことあるごとに「私の灰色の脳細胞が……」と言ってみたり,唐突に「あれれ〜?」と言い出したり,伸びた髪を掻き回しながら推理をしてみてもいいんじゃないでしょうか。


 そんな幻影探偵団ですが,残念なことに現在は通販・店舗販売ともに流通していないようです。
 が。
 11月におこなわれる「ゲームマーケット2015秋」で再販されるとのこと。keikoku.blog.so-net.ne.jp
 乱歩好き,ミステリー好きな方はきっと楽しめるゲームです。




 

 「影男」が掲載されている乱歩全集です。


 

 最近放送された乱歩作品を原典にしたアニメ。僕は見ていないので詳しく知らないのですが,影男も出てくるようです。