編集者はボードゲームの夢を見るか

ボードゲーム好きな新人編集者のブログ。ボードゲームの本を作りたい。

3 Man Chess(3人用チェス)

3 Man Chess

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人数:3人
ルールの難しさ:★★★★☆
プレイの難しさ:★★★★★
プレイ時間:60〜90分?



■目次

 ▶ゲームの紹介/概要
 ▶ゲームの流れ
 ▶プレイ感

■ゲームの紹介/概要

 「チェスをやりたいけど今ここには3人しかいない。2人でチェスをするとひとり余っちゃうし,どうしよう……」

 誰でも一度はそんな悩みを覚えたことがあるでしょう。
 
 そんな悩みを解決してくれるのがこちらのゲーム。
 3 Man Chessです。


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 3人用チェス。円形のチェス盤が生み出す混迷が特徴……?


 もうここまで言ってしまえばこの先の話を読まなくても良い気もしますが,見た目のインパクト以上に大変面白いのでどうぞどなたも読んでいってください。
 決してご遠慮はありません。

 なお,本ゲームに付属のルールは英語のみのため,もしかしたら間違いがあるかもしれません。
 お気づきの点があればご指摘ください。

■ゲームの流れ

 さて。
 三人用になったところで基本はチェスです。
 ゲームは白のプレイヤーの手番から始まり,時計回りで進んでいきます。
 通常のチェスのルールがわからない方はここから先を読む前にちょっと調べてみてください。

 3 Man Chessでは キングを取られたプレイヤーは敗退し,最後の一人になるまで戦いが続きます。

 ここで一つ注意点として,通常のチェスでいう「チェックメイト」の状態になっても敗退ではありません。キングを取られたら負けになります。
 通常の2人用チェスでは「チェックメイト」も「キングを取られる」も実質同じような意味ですが,このゲームでは意味合いがちょっと違ってくるので覚えておいてください。

 ではルールを見ていく前に,いちどボードを確認しましょう。

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 3 Man Chess用のボード。

 コマが動くマスは同心円状に並び,その中央には円。
 各マスには軌道が書かれており。よく見ると外周に3本の緑色のラインがあります。

 ここにコマを並べると,初期状態はこのようになります。

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 初期配置。外周にある緑のラインを挟んで各色のコマを並べる。


 上でも書いたように基本的にはチェスなので,各コマは基本的に通常のチェスのように動きます。
 ポーンは決して後退しない小さな勇者。ビショップは斜め移動の孤独な賢者であり,クイーンは縦横無尽に盤面を飛び回る最強の自由の象徴であることに変わりはありません。そしてキングは全方向に1歩ずつ動く思慮深い長老というやつ*1ですね。
 
 しかしながら当然通常とは異なってくる点もあります。

 それを説明するに際して,少し盤上の説明をしておきましょう。

 まず中央の円の部分。
 ここは全方向から通過できるスペースです。
 ただし,このスペースはコマの移動上1マスとは数えませんし,この上で止まることはできません。


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 ①-a 中央部分を通りたいルーク。

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 ①-b 中央を通り抜け,反対側に出ることができる。


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 ②-a 中央部分を通りたいポーン。

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 ②-b 中央を通り抜けることができるが,1マスには数えないため反対側に出る。相手の陣地の最奥に入れば通常通り「成る」こともできる。


 次は各マスに書かれた軌道
 これは斜め移動ができるコマの移動範囲を示します。
 通常のチェス同様,他のコマを飛び越えることはできません。


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 ③-a ビショップの配置。現在いるマスの軌道(赤線)上を動くことができる。

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 ③-b 左の軌道に乗ってここまで行くこともできる。

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 ③-b 右の軌道に乗ってここまで行くこともできる。

 ただし,ボードの一番外周にある軌道のに来た場合,いったんここで止まります。
 彼ら彼女らはあくまで弧を描いで動くことしかできません。

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 軌道の角。ココに入ったらいったん移動を終える。

 そして初期配置の基準とした緑のライン
 これは各プレイヤーの陣地を守る堀です。
 最初はこの堀を飛び越えることはできません

 ですから,いきなりルークが隣のルークを叩く,ということはありません。

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 堀。どのコマも堀を飛び越えることはできない。

 ゲームが進んで条件を満たすと,橋がかかり,堀をまたいで移動することができるようになります。

 さて。盤面の説明をするついでに大体の駒の動きを説明してしまった気がします。
 
 ですがここまでのルールを読んだ聡明な皆様はナイトの動きが気になっているかもしれません。

 このゲームでもナイトの移動先は(直感的なイメージとしては)通常のチェスと同じです。
 ただし結果は同じですが移動の過程があり,前後に2マス,その後左右に1マス動くか,前後に1マス,その後左右に2マス動くかのどちらかです。

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 ④-a ナイトの移動範囲。黒のナイトはポーンのある位置へ移動できる。

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 ④-b ナイトが中央を経由して移動する場合。あくまで「前後に2マス,その後左右に1マス」か「前後に2マス,その後左右に1マス」で移動するため,移動できる場所はポーンのある位置となる。


 その他変わったルールとして,小川(creek)というポーンの動きを制限するルールがあります。

 誰かひとりのキングが取られたら,そのプレイヤーのコマは盤上に残したまま残りの2人で対戦を続け,最後のひとりになったプレイヤーの勝利です!


■プレイ感

 ここからゲームの話をするときは,白▶灰色▶黒の順番で手番が進むと思ってください。

 チェスのルールを知っている程度の3人で遊びましたが,かなり難しい……けどとても面白いゲームです。

 結論としてはこのTweetのとおりなのですが,

 まずビショップが圧倒的に強い
 慣れないうち「軌道」の動きを把握しにくいのですが,そのためビショップが想定外の動きをして飛んで来ることがままあります。
 ビショップのことを「斜め移動の孤独な賢者」と称した例を上げましたが,3 Man Chessにおけるビショップは「意識の外から狙撃してくるスナイパー」です。

 以前遊んだ際には序盤で不注意からクイーンを失ったのですが,ビショップ2人を温存していたら勝てた程度には強いコマです。


 また,3人もプレイヤーがいると敵のコマが通常の2倍。もうわけがわからなりません。
 さらに盤面は丸いし軌道とかいう謎の線がびっしりと書いてあるので長時間見続けているとチェス盤酔いを起こします。

 また,ルーク(クイーン)が中央側3列に入ると,円を描きつつどんどん敵軍を殲滅していきます。

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 ルークが中央に来た図。ここから同心円上で半円を描いて白のナイトを取り………

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 次の番ではまた半円を描いて灰色のポーンを叩きに来ます。

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 ルークの大移動。

 斜め?移動もできるクイーンはさらに恐ろしいことに。誰ですかクイーンのことを「クイーンは縦横無尽に盤面を飛び回る最強の自由の象徴」なんて言ったのは。このゲームにおけるクイーンは完全に「誰にも止めることのできない神出鬼没の暗殺者」です。

 コマの移動もさることながら,プレイヤーが3人いるというのはいわずもがな,大きな違いです。

 極端な話,二人のプレイヤーが結託すれば,二人がかりのディスカバードアタックで容易にもう一人のコマを落とすことができます。


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 灰色の手番でビショップをここへ動かした。ビショップの軌道上には黒のルークと白のルークがいる。

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 次の黒の番でルークをここに動かして白へチェック。ルークが動いたことにより白のルークは灰色のビショップに狙われるようになってしまいました。白はキングを逃がすためにルークを諦めるしかありません。


 とはいえそんな協力もいつまでもできるとは限りません。
 最終的には1対1の対戦になるため,同盟を組んでいた相手の戦力もある程度削いでおきたい。
 どのタイミングで裏切るか,謎の心理戦が発生します。
 
 またチェックメイトも問題で,「キングが取られたら負け」というルールが効いてくる部分です。

 たとえばこの場面。

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 黒のルーク・ビショップ,灰色のクイーンでチェックメイトを掛ける直前。

 黒の手番で左にいるルークを一番外周に運べば,白のキングはチェックメイト……かのようにみえるのですが,誰がキングを取るのかが問題です。

 灰色のクイーンがキングをとれば次の黒の番でルークにクイーンを取られますし,ルークがとれば次の番でクイーンに取られてしまうためお互いに手が出せません。
 この隙に白が盤面を動かすことができるかもしれません。

 おもしろい……早くまたやりたい……
 ちょっとでもチェスのルールがわかれば大丈夫。チェスにちょっとくらい詳しかったところで3 Man Chessの前では何の役にも立ちません。

 通常のチェスに比べるとかなり大味でパーティー色が強く感じますが楽しいのでやってみてください。またはやりましょう。

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*1:小川洋子著『猫を抱いて象と泳ぐ』P.4より