編集者はボードゲームの夢を見るか

ボードゲーム好きな新人編集者のブログ。ボードゲームの本を作りたい。

ディセント:プレイへの道 2 〜サマリーをつくろう〜

 みなさんはディセントをご存知でしょうか。
 以前このブログでもディセントの記事を書いたのでご存じの方もいるかもしれません。

henbodo.hatenablog.com

 この記事に引続き,ディセントプレイへの第2歩目を踏み出します。
 前回はディセントに登場するモンスターやキャラクターシートを見やすくしましたが,今回はサマリーをつくります。
 と同時に,サマリーをつくる際に私が気をつけていることもご紹介します。
 
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 この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2015の14日めの記事です。
 
 お詫び:本記事は上記の通りBoard Game Design Advent Calendar 2015の14日めの記事でしたが,こちらの投稿設定のミスで該当日に公開できておりませんでした。 Board Game Design Advent Calendar 2015に関係する皆様に御迷惑をお掛けしてしまい,申し訳ありませんでした。

■目次

 ▶サマリーってなんだ?
 ▶サマリーをつくるときに気をつけること
 ▶実際に作ってみよう:ディセント編

■サマリーってなんだ?

 さて。
 ここまで「サマリーをつくろう!」といってきましたが,そもそもサマリーってなんでしょうか。
 
 サマリー(summary)の本来の意味は「要約」。
 ボードゲーム関係でサマリーということばが使われたら,「ゲームの手順や煩雑な効果を一覧にまとめたもの」くらいの意味であることがほとんどでしょう。「ルール補足用シート」「プレイエイド」などとよばれることもあります。
 この記事の中でもその意味で使用しています。

 ボードゲームに同梱されているメーカー製のものだけでなく,個人の方がつくったものもあります。

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 「枯山水」に同梱されているサマリー

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 「コヨーテ」のカード内容のサマリー(?)。カードの裏面がサマリーになっている。

■サマリーをつくるときに気をつけること

 そんなサマリーですが,つくるのは意外と簡単。
 ルール説明書にかかれていることをA4の紙に並べるだけでも十分役に立ちます。

 ですが,いくつかのことに気をつけるともうちょっと見やすいものになるかもしれません。
 「このゲーム,慣れればおもしろいけどわかりにくいな…… いっちょサマリーでもつくりますか!」と思った方はこれらのことを頭の片隅においてみると,役に立つかもしれません。

 そして先に書いておきますが,以下の内容は私の個人的な意見です。
 これ以外にも「いいサマリー」についての考え方はみなさんあるでしょう。参考程度にご覧ください。
  

1. 掲載する要素を決めよう

 ひとくちに「サマリー」といっても掲載してある内容はさまざまです。
 たとえばトランプゲームのポーカーなら,「役の種類」の一覧がサマリーになるでしょうし,上記の写真にある「枯山水」のように様々な効果をもったカードが出てくる場合,「カード効果やカード枚数の一覧」がサマリーになるでしょう。
 また,自分の手番におこなうことが何種類もあって複雑な場合は,「手番にできることの一覧」をサマリーすることもあります。もちろん,それらのいくつかを組み合わせる場合もあります。
 
 今回のディセントでは,「手番にできることの一覧」を作ってみます。

2. 大きさを考えよう

 内容が決まったら,最終的にどんな形に仕上げるのかを決めます。
 サマリーの本来の意味が「要約」ですので,ぱっと見て内容がわかりやすいほうが好ましいでしょう。
 
 サマリーといいつつ2〜3ページになっているものも見かけますが,あくまでサマリーはゲームのプレイを補助するもの。そのサマリーを見て「うわっ…… こんなにあるのか」と思わせてしまうのものはあまりよろしくないのではないかと思っています。
 基本的には大きくてもA4片面程度,小さくできるものは小さくしたほうがサマリーを見る際の精神的な障壁を取り払えるのではないでしょうか。

 「大きさなんて書きながら決めればいいじゃん!」と思う方もいるかもしれませんが,容量を決めずに書いてしまうとついつい文章が多くなりすぎてしまうものです。
 はじめに「絶対にこのサイズで収める!」と決めておくと,そこに向けて文量を調整するので,すっきりした文章に(せざるを得なく)なります。

 今回は英雄側の行動をA5片面のみで仕上げることを目指します。

3. 誰が読むのかを考えよう

 限られた文章量でモノを書くときは,誰がその文章を読むのかを意識することが大切です。
 制限された文章量の中では,できるだけ専門用語を使うようにすると文字量を削ることができます。その一方で専門用語を使うとその言葉を知らない人からすると,サマリーが意味のわからないものになってしまいます。(最悪,サマリーのサマリーをつくらなければならない事態にも……)

 たとえばボードゲームでよく見かけるルール,いわゆるトリックテイキングの説明を書く際には,専門用語を使わないと
 「最初にカードを出した人と同じ模様のカードを持っているプレイヤーは,その模様のカードを出さなければならないが,同じ模様のカードを持っていない場合はどのカードを出してよい。
 と84文字も使って説明しているものを,専門用語を使えば
 「マストフォロー
 の7文字で済みます。

 とくに今回のディセントのように,情報量が多い場合は想定される利用者に適した用語を使うようにしましょう。

 ちなみに今回は初心者でもディセントを楽しめるようにということで,特別な用語は使いません。

4. 内容を決めてラフスケッチを描こう

 誰が読むのかの想定をして,用語の方針をある程度固めたらいよいよ内容を決めていきます。
 サマリーはどうしても要素が詰まりがちになるので,あらかじめ各内容を決めておくと「ああ,この説明を入れ忘れた…… もう一回全体のレイアウトを調整してこの説明を入れないと……」という面倒を避けられます。
 その際,おおよそのラフスケッチも書いておくと製作中のことをイメージしやすく,説明すべき要素がなんなのかを理解しやすくなります。

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 原稿とラフスケッチ。ちなみにお仕事で本を作るときもこんな感じで進めています。

■実際に作ってみよう:ディセント編

 ということで,ここまでで作った落書k……もとい,原稿とラフスケッチを元にさっそく作ってみましょう。
 作り方はいろいろありますが,今回はIn Design等は使わずにMS Excelのみを使って作ってみます。

 まずは先の原稿の内容を打ち込みます。

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 原稿の打ち込み後。ほぼラフスケッチどおりにまとまった。

 これでも立派にサマリーといえばサマリーなのですが,ちょっと見にくい気がしますね。
 全体がのっぺりしていて見る気を起こさせません。

 基本的にサマリーは頭から最後までを通して読むものではなく,必要な情報を探して読むタイプの資料ですので,探している情報がどこにあるのか見やすくしましょう。

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 一覧の中の各行動とそれに対応する説明に共通の色を付けた。

 これで左上の行動一覧がもくじのはたらきも果たしてくれるようになりました。
 (色は画面上で見やすくするために淡くしています。実際の印刷時はもっとはっきりと違う色に分けたほうがいいでしょう。)
 
 元のものと比べると,どこにどの情報があるのかひと目でわかるようになりました。
 ただ,ちょっと行間が詰まりすぎている気がします。
 とくに「2. 攻撃」のあたりは見づらい印象がありますね。

 せっかく下に余白があるので,行幅はできる限り広く取りましょう。

 
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 0.4mmほど行を広げた。

 1ミリに見たない変化ですが,なんとなくすっきり読めるようになりました。
 
 あとは書体(フォント)ですが,サマリーを作ると書体にもこだわりたくなる気持ちがでてしまいます。

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 「しねきゃぷしょん」を使った”それっぽい”サマリー(文字サイズ未調整)。

 ですが,サマリーはあくまで見やすさ優先。
 こだわりたくなる気持ちをぐっと抑え,ゴシック系かヒラギノを使っておくのが無難でしょう。

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 全面MS ゴシック。見やすいがちょっと地味?

 こだわりを出したいときにはタイトルや挿絵等にちょっとしたこだわりを入れるくらいがちょうどいいかもしれません。

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 タイトル表記だけちょっと格好をつけたもの。

 今回のサマリーはこれで完成です。
 
 サマリーを作る上では「パッと見での見やすさ」を重視すると便利なものになると思います!

 こんなに簡単なサマリー作り!
 さぁ,さっそく始めてみましょう。


 

 デザインの教科書。お仕事で紙面を組むときに参考にしています。


 「エクセルもいいけどインデザイン? ってやつを使ってみたいんだけど……」というインデザイン初心者の方にはこちらの本がおすすめです。