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編集者はボードゲームの夢を見るか

ボードゲーム好きな新人編集者のブログ。ボードゲームの本を作りたい。

ボードゲーム×教育(1.論文紹介)

 昨日だったでしょうか。
 twitterでこんなまとめを目にしました。

togetter.com

 おおまかに言うと,知的・発達障害のある子供とボードゲーム(カタンの開拓者)をプレイしたところ,その子供に変化がみられたというものです。
 詳細は上記togetterをごらんください。

 さて。
 上記の話とは若干離れますが,「ボードゲーム×教育」という話題は以前からしばしば目にすることがありました。
 面白そうな話題だと思い調べてはいたものの,なかなかまとめる機会がありませんでした。
 いい機会?なので「ボードゲーム×教育」について調べたことを,ひとまずまとめておこうと思います。
 
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 まず読んだのは,有田の論文『ドイツボードゲームの教育利用の試み:―考える喜びを知り生きる力に結びつける―』1)。
 さて,有田さんは大学初年次の学生を対象としたセミナーでボードゲームを導入しています。
 様々なボードゲーム(ここではドイツゲームのことを指しています)を対象に,毎回何人かの受講生が事前にゲームのルールを理解しておき,他の学生に向けてルールのプレゼンをします。そして実際にプレイし,プレイ後はゲームの戦略等について議論します。
 これらによって,以下の4点の獲得を目標にするといいます。

・ルールやメカニズムを理解する能力と技術
・勝つための戦略を考え出す能力と技術
・ルールや分析の結果を説明・表現する能力と技術
・文化・教育的観点からゲームを評価する能力と技術


 そしてボードゲームの意義について,次のように述べています。
 

具体的に述べるならば,ボードゲー ムによって楽しみながら思考力のトレーニングができるというだけでなく,以下のように,現代社会におけるコミュニケーションや社会的インタラクションに関わる力を必ずしも意識しなくてもトレーニングできるという面に関して,ボードゲームの活用は大きな役割を果たすことができるのではないかと期待している。

 
 ということでボードゲームを通して獲得できるものについての記述があるのですが,これを読んで納得した部分もありました。が,正直疑問符も浮かびました。
 
 疑問を持った部分は「本当にボードゲームを通してコミュニケーションや社会的インタラクティブ(相互作用)に関わる力を育成できるのか」ということです。
 たしかにボードゲームを介してのコミュニケーションを非常に取りやすい。
 ただ,ボードゲームというつながりの外に出たときにもそのコミュニケーション能力が生きてくるのかというと……
 
 少なくとも私の周りでは,ボードゲーム中にコミュニケーションがとれても普段はコミュニケーションに対して控えめな人が(私を含め)多いように見えます。
 いかがですか Dear my friends。
 (私のイメージする「コミュニケーション能力」はいわゆる「コミュ力」といわれる能力なので,論文中で言われている「現代社会におけるコミュニケーション」とは別のものかもしれません。)
 
 さて,ではボードゲームとコミュニケーションということで論文を探してみると,大谷の『コミュニケーション教育としてのボードゲームの開発』2)に協力型ゲームのコミュニケーションについての事例があります。
 ここではコミュニケーションにおける異質性と同質性等について述べた上で,協力型ゲームをプレイした学生の感想が書かれています。
 協力型ゲームを通じての一体感が楽しいという旨の感想ももちろんありますが,その反対の意見もあるようです。

 逆に次のように,そうした共感することを目指すコミュニケーションの息苦しさ,しんどさを述べる意見も多かった。自分が失敗すると全員が失敗することになるからというプレッシャーは,ゲームとして行うならば,むしろ楽しむための要素である。にもかかわらず,感想に書かれた言葉は,「息苦しさ」や「不安」「圧迫感」といった比較的重い言葉であった。

 また,次のような他者への理解についての言及もあったようです。
 

「このゲームを通して分かったことは,自分の中での常識や概念は,他の人にとっては必ずしもそうではないということです。色のイメージはどんな環境で過ごしてきたのか,年齢,性別などによっても異なるのかもしれません。自分と異なる色を誰かが出したとき,信じられない!と思う反面,理由を聞くと納得出来たり新たな発見があったりしてとても興味深かったです。」

 協力型のボードゲームで過剰にプレッシャーを感じてしまう可能性もあるものの,他者への理解が得られるのなら自閉症児との遊びに向いているのでは? と考えたところでこんな論文がありました。
 
 吉田,井上の『自閉症児におけるボードゲームを利用した社会的スキル訓練の効果』3)。
 これはゲーム中に社会的スキルのロールプレイ(友人が文章を読んでいる間うなずいて聞く,友達の服をほめるなど)が発生するスゴロクをおこない,無事にそれぞれのロールプレイを達成するとポイントがもらえるというもの。
 このゲームを通して,自閉症児の社会的スキルに向上が見られたといいます。


 これと冒頭のtogetterを合わせて考えると,(togetterのまとめは自閉症の話ではありませんが)自閉症など子供の支援にボードゲームを使ったコミュニケーションは一定の効果があるように見えます。
 
が,残念なことに私自身教育分野や発達心理学等について不勉強なので結論は何も言えません。
 今後勉強をして続きを書いていきたいと思います。
 
 続きは今後ならこの記事は何だったんだという話になりますが,今回の記事はこれから「ボードゲーム×教育」について考えていく足がかりということで。

 枯山水やキムタクのDIXITでボードゲームのメディアへの露出が多くなってきましたし,たまにこんなことを考えてみてもいいんではないでしょうか。
 
 
 ボードゲームと直接の関わりはありませんが,(広義の)ゲームを通しての子供の発達支援という視点ではこんな本があります。
 



 引用文献
 1)有田隆也.ドイツボードゲームの教育利用の試み:―考える喜びを知り生きる力に結びつける―.コンピュータ&エデュケーション 31(0),34-39,2011. https://www.jstage.jst.go.jp/article/konpyutariyoukyouiku/31/0/31_34/_article/-char/ja/,(2015-05-03).
 2)大谷直史.コミュニケーション教育としてのボードゲームの開発.鳥取大学教育研究論集 5, 67-74, 2015-02-28.http://repository.lib.tottori-u.ac.jp/Repository/metadata/4898,(2015−5−03)
 3)吉田裕彦,井上雅彦.自閉症児におけるボードゲームを利用した社会的スキル訓練の効果 (実践研究).行動療法研究 34(3), 311-323, 2008-09-30.http://ci.nii.ac.jp/naid/110009667584,(2015−05−03)